02

「供給事業者」の使命

日本中で使用される
エネルギーを
安定的に届ける責務

PROLOGUE生活に直結するLPガスだからこそ
あるべき時にあるべき場所へ。

2019年春、LPガスの輸入元であるアメリカ・ヒューストンの港に濃霧が発生。LPガスを運ぶ船が何週間も出航できないという事態が起こり、ENEOSグローブの社内には激震が走った。販売見通しからしても在庫が枯渇するのは時間の問題だ。
販売方針を決定する部門と支店の営業が一丸となり、低在庫を乗り切るためにあらゆる手立てを考えて行動した。それぞれの立場で、エネルギーを届ける仕事に責任を感じながら――。

PROJECT MEMBERS

兼 健太郎
(2002年入社)

東京支店において営業を担当する。主な取引先は都内のオートガススタンド。

鈴木 雄樹
(2013年入社)

東京支店の営業として、東京、神奈川、千葉の取引先を担当。物流の調整なども行う。

榊 文美
(2010年入社)

販売総括部計画グループに所属し、LPガスの販売数量管理を担当する。

01

濃霧により
輸入船がストップ
日本のLPガスが低在庫に

日本で使用されているLPガスはその8割を輸入に頼っている。
従来は、サウジアラビアなどの中東諸国に多くを依存していた。しかし、2000年代後半に起きた「シェールガス革命」によってアメリカが世界最大の天然ガス生産国となった。現在、日本は輸入量の半分以上をアメリカに頼り、同国が最大のLPガス輸入元となっている。
輸入開始から数年が経過しても、物流のルートや時間、運河の混雑など問題は絶えない。ENEOSグローブでは調達・オペレーション・営業が日々連携を取りながらLPガスの安定供給を支えるために奔走する。それでも予想不可能な自然現象によって起きたのが、2019年春の在庫の逼迫だった。2月にヒューストンの港付近に濃霧が発生し、船舶が何週間も出航できない状況が続いたのだ。販売総括部でLPガスの販売数量管理を担当する榊は、東京支店員の執務室に日参し、祈るような気持ちで販売数量の見通しの数字を担当一人ひとりに確認していたという。その時の状況を東京支店の兼はこう振り返る。
「販売の見通しは、本社からパソコンで支店のデータを見ればわかります。それでも、一人ひとりに見通しを聞いてズレがないか、逐一ヒアリングしている姿を見て、これはいよいよ在庫をつないでいくために、我々もできる限りを尽くさなければと肌で感じたのです。私も彼女と同じ立場だったことがあるため、彼女の状況はよくわかりました」
現場を巻き込んで販売量の調整が必要なほど、日本全国でその春のLPガスの在庫は底を突こうとしていた。

02

国内にある在庫で
必要なエネルギーを
どう確保するか

LPガスは、通常3~4カ月先の販売見通しをもとに輸入される。そのため、急激な販売量の増減に対し、そのつど輸入で調整することは困難だ。在庫が少なくなることが予想される場合には、他社からの買い取り、もしくは販売量を抑え調整するのが鉄則だ。今回のケースでは船が出航できないというやむを得ない事情により、アメリカからの供給がストップ。支店ごとの調整では間に合わず、在庫の確保は手詰まりの状態に陥った。
さらに、LPガスは供給途絶という不測の事態が起きた際に国内の産業や日常生活に著しい影響を与える恐れがあるため、法律によって備蓄が義務付けられている。LPガスのトップシェアを誇るENEOSグローブにも当然、インフラを支える企業の責任として輸入量の約40日分を民間備蓄(法定備蓄)しておく義務が課されており、その量を割ることなく在庫の調整をする必要があった。調整業務に奔走した榊にとって、その数カ月は「胃の痛む日々だった」という。

03

法定備蓄を割らずに
お客様の元へLPガスを
届け続ける

平常時であれば在庫があることを前提としてLPガスを販売する営業部門が、1日ごとに在庫のやりくりや配送ルートに頭を悩ませ、可能な限りの調整を行った。兼は、国内で売り買いの担当をしている取引先から在庫をつなぐためにLPガスを調達。販売が主な業務である鈴木は、低在庫の基地からの出荷を抑え、他の基地から出荷するための物流の調整などを行ったという。運送業界も人手不足の上、タンクローリー運転手の高齢化が進んでいる。出荷地を日々柔軟に変更する交渉は容易ではなかった。
低在庫の状態が続く中、備蓄義務を果たしながら必要とされる場所にLPガスを届ける。業界トップの使命を胸に、関係部署が一丸となった。タンカーが無事に基地に入り、ようやく在庫が回復したのは6月のこと。榊、兼、鈴木をはじめとしたENEOSグローブの社員たちはようやく胸をなでおろした。
この危機を乗り越えた力の根源と強固なチームワークの源は、日常を支えるエネルギーを扱う仕事への責任感と誇りに他ならない。

EPILOGUE当たり前を支える難しさを知り
使命感と責任感がより強固に。

「日本のLPガスの在庫が危機的状況にある」。この事実は、一般消費者は知る由もない。多くの人が日常で当たり前に料理をしたり風呂を沸かしたりするためにLPガスを使用する。その在庫確保に必死になるENEOSグローブの社員の姿は、関係者以外に知られることはほとんどないだろう。しかし、この当たり前の日常を支えることこそ、インフラを扱う企業としての矜持である。彼らが縁の下の力持ちとして日々の仕事を全うするその努力と熱意で、私たちの日常は支えられている。

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