01
「輸入事業者」の使命
環境の変化・
物流の障壁を乗り越え、
いかなる時も
安定調達する
PROLOGUEシェールガス革命により大きく変化した
世界のエネルギーバランスと日本。
21世紀に入り、技術革新と生産コストの低下などによって、それまで採算上不可能であったシェールガスの生産が可能となった。低コストの非在来型天然ガスの登場、いわゆる「シェールガス革命」である。これに伴い、世界のエネルギー事情は大きく変わることとなった。エネルギー輸入大国であったアメリカが一転、世界各国へエネルギーを輸出する資源大国となる。LPガスの全輸入量の9割以上を中東諸国に頼っていた日本では、中東諸国の地政学リスクの軽減、調達ソースの多様化のため、輸入元をアメリカへシフトしようという動きが高まった。
PROJECT MEMBERS
穂阪 麗子
(2009年入社)
シンガポール事務所にて、LPガスの調達やトレーディングの業務を担当している。
宮武 達也
(2010年入社)
本社にて、主にシンガポールでのLPガス調達のサポート業務を行っている。
米澤 郁弥
(2014年入社)
購入したLPガスを、輸入船を使って全国の基地に届け、販売している。
01
中東産LPガスから
アメリカ産LPガスへ、
契約締結の光と影
「これからの競争で勝ち残るためには、アメリカカーゴ(貨物)の調達は不可欠だ」。2000年代後半、世界のエネルギー資源の勢力図を塗り替えるといわれたシェールガス革命が起き、アメリカで生産されるLPガスに各国が注目していた。当時、LPガス全輸入量の9割以上を中東諸国に依存していた日本。国際情勢の影響で輸入が不安定になるリスクを低減するため、輸入経路の多様化を目指す国の方針も相まって、ENEOSグローブはアメリカとの契約締結に向けた道筋を模索してきた。米エネルギー企業とのパイプは太くなかったが、当時の契約担当者は足しげく渡航し、様々なつてを辿って契約締結を打診。法令や契約に関する課題も存在したが、社内の知恵と経験を総動員してなんとか契約締結にこぎつけた。「60年余り続いた中東諸国への依存から、大きく供給ソースが変わったのはあまりにインパクトの強い出来事でした」と、宮武は当時の業界の様子を振り返る。しかし無事契約を締結した後も、トラブルは続いた。アメリカ産LPガスが、従来の中東産LPガスの性状と異なっていたためである。中東産向けに設計された貯蔵用基地の機器類に支障が生じたり、アメリカ産LPガスは特有の臭いを発していたりと、解決すべき課題は山積していた。困難な状況に置かれつつも、お客様に満足していただく品質を担保するため、細かな調査・研究で一つひとつの課題を乗り越えていった。
02
立ちはだかる物流の壁と、
オペレーター・
在庫管理者の苦悩
アメリカ産へのシフトに伴う最も大きな課題は、物流であった。それまで中東諸国から日本までの航行には、片道約18日かかっていた。対してアメリカからの輸入が始まった2013年当初は、アフリカの喜望峰を経由するルートで片道約45日と、2倍以上の日数を要した。特に冬場は日本国内の需要が高まるため、ガス切れを起こすことなく国内の在庫をつなぐには綿密な計画と日々の調整力が求められた。通常このような場合、オペレーターは細心の注意を払って船に適切な指示を出し、遅延のない航行を目指す。それでも遅れが生じる場合は、在庫管理担当者による国内基地の在庫繰りや、他企業からの買い付け・一時的な在庫の交換に関する交渉が必要であった。2016年にパナマ運河が拡張したことにより、片道約25日と航海日数の短縮が可能に。しかし、東シナ海を通過し日本までLPガスを輸送していた従来とは異なり、長距離の太平洋航海を考慮した船舶燃料の補給計画が必要となり、オペレーターは頭を悩ませた。「アメリカ産のLPガスの輸入が始まって5~6年経ちますが、いまだに試行錯誤の日々です」と穂阪は語る。中東からアメリカへ。その物流の大きな変化は、多くの苦労と挑戦によって支えられているのだ。
03
国民の生活を守る
LPガスを、
安定的に
すべてのユーザーへ
アメリカからの輸入において、霧の発生やパナマ運河の混雑などにより船舶の到着が遅れることも珍しくない。例えば2018年末から2019年3月頃にかけてヒューストンで大規模な濃霧が発生し、アメリカからの輸出量が大幅に減少。この影響で国内需要を満たす数量が輸入できないという異常事態に陥ったことがあった。穂阪は手あたり次第に電話をかけ、LPガスを日本へ販売してくれるバイヤーを必死に探し、調達のために交渉を進めた。一方、宮武と米澤は国内の在庫を切らすことなく管理・調整することに最善を尽くした。3人はその差し迫った状況を「本当に大変な時期だった」と振り返る。「LPガスの出荷が突発的に伸びるのは、大規模な自然災害など有事の際。緊急時であればあるほどLPガスは国民の命をつなぐ重要なものなんです。日本の皆様の生活を背負う責任を改めて感じた出来事でした」と米澤。東日本大震災では、都市ガスが復旧までに30日以上かかった中で、LPガスは1~2日で復旧に至っている。LPガスが人々の生活を大きく支えるエネルギーだからこそ、安定的に供給しなければいけない。ENEOSグローブ社員は常にその使命と覚悟を胸に抱いているのだ。
EPILOGUEチーム一丸となり、途切れることなく
確実にLPガスを調達するという使命。
日本の約4割の世帯が平時から利用しているLPガスは、石炭など他の化石燃料と比較しCO2排出係数が低いクリーンエネルギーであり、工場などでも従来のエネルギーからの転換が促進されている。それほど重要度の高いエネルギーを絶やすことなく調達し、日本国内へ供給することが調達需給部門の責務だ。同部門の仕事は、個人プレーでは成り立たない。各々が様々な役割を全うして初めて、日本のためにLPガスを調達するという目的を達成できる。日本国民の生活を支えるべく、今日も3人はそれぞれの業務に邁進している。